糖尿病の食事療法と運動療法

糖尿病の治療には、運動療法と食事療法があり、継続して取り組んでいく必要があります。

なぜなら糖尿病の大半を占める2型糖尿病の主な発症原因に過食や運動不足などの生活習慣が大きく関わっているからです。
運動療法と食事療法に取り組んでも、血糖値が上手くコントロールできない時には薬物療法も検討されますが、運動療法と食事療法は続けていくことになります。

運動療法の効果

運動療法は糖尿病の改善の他にも、生涯に渡って健康な体を維持していくためにも必要なものです。
運動療法の効果には次のようなものが挙げられます。

  • ブドウ糖や脂肪酸の利用が促されて血糖値が下がる
  • 運動の継続により低下していたインスリンの働きが改善される
  • 減量や肥満の予防になる
  • 骨が丈夫になり骨粗鬆症の予防になる
  • 高血圧や脂質異常症(高脂血症)が改善される
  • 心肺機能や筋力、体力が向上する
  • ストレス解消になる
ウォーキングをする男性

どんな運動をすればいいの?

運動療法ではウォーキング、自転車、水泳などの有酸素運動を週3~5回程度行います。
運動量は時間にすると1日20~60分程度、軽く息があがる、少し汗ばんでくる、くらいが目安になります。
食後に行うと血糖値の上昇が抑えられ、より効果的です。有酸素運動の他、ストレッチ、ダンベル、スクワットなどのレジスタンス運動も並行して週2~3回行うことが勧められています。

運動療法を行う際の注意点

運動療法を始める前には、必ず主治医の指導を受けてから始めるようにします。
誤った方法で糖尿病を悪化させたり、心筋梗塞などを発症したりするリスクもあるからです。

病状によっては運動禁止または制限が必要なケースもあります。

運動を休んだ方が良い時

こんな時は無理をせずに運動を延期しましょう。

  • 血糖値が極端に高い時(尿にケトン体が出ている時)
  • 血圧がいつもより高く自覚症状を感じる時
  • 脈が途切れたり、不規則になっている時
  • 風邪などの感染症を患っている時や体調が悪いと感じる時
  • 極端に暑い日や寒い日

運動を中止しなければならない時

次のような症状が現れたら、すぐに運動を中止しましょう。

  • 動悸、めまい、脱力感、空腹感、頭痛、冷や汗、吐き気、しびれなどの低血糖症状が現れた時
  • 足首や膝などの関節に異常を感じた時

運動する時間が無い時は

忙しくて運動に取り組む時間を確保できない人は、日常生活の中に運動を取り入れて体を動かす機会を作ってみましょう。

家事の最中やテレビを見ながらの簡単なストレッチ、通勤帰宅時はバスや電車を1駅前で降りて歩くなど、ちょっと工夫することで日常生活に運動を取り入れることができます。

掃除機をかける女性

運動療法を継続させるコツ

運動療法は続けてこそ効果が得られるものです。成功させるためには

  • 続けられる運動を選ぶ
  • 高すぎる目標は立てない
  • 心地良いと思える時間に実施する

など、無理が無いようにしましょう。また運動に付き合ってくれる人がいると続けやすいでしょう。

食事療法とは?

糖尿病になってしまったら「もう好きなものが食べられない」「厳しい食事制限をしなければならない」そういうイメージを持っている人も決して少なくないはずです。
ところが糖尿病になってしまったからと言って、食べてはいけない食品があるわけではありません。
また食事療法という特別なメニューがあるわけでもありません。

食事療法では、1日に必要なエネルギー量を意識しながら、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、バランスのよい栄養摂取を心掛けることになります。
そのように考えると、食事療法は糖尿病だからという特別なものではなく、健康な人でも考えなければならないことなのです。

バランスの取れた食事

食事療法の方法

1日に必要なエネルギー量は、年齢、性別、運動量、身体の大きさなど、1人ひとり異なるので、主治医や栄養士と相談して決定してもらいます。献立を考えるためには、日本糖尿病学会が発行している「糖尿病食事療法のための食品交換表」が使いやすく、よく利用されています。

食品交換表では、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどのそれぞれの栄養を主に含んだ食品が6つの食品グループに分けられています。食品のエネルギー量80kcalを1単位としているので、1日の総摂取エネルギー量を1600kcalと指示された人の場合、1日20単位であれば好きな自分の好きな食品を選ぶことができます。

食品交換表の中から決められたエネルギー量を上回らないように、また栄養素に偏りが無いように選ぶことが大切です。

外食や中食時は

外食や中食(買ってきた総菜やテイクアウトしたものを自宅で食べること)をする時は、エネルギー量の過剰摂取になりやすくなり、栄養バランスも偏りやすくなります。普段から食べている食事のエネルギー量や食品グループを覚えるようにして、エネルギーの取りすぎにならないように注意しながら、栄養のバランスも意識して選ぶように注意しましょう。

定食を選ぶ

ごはんや麺がメインのものではなく、主食(ごはんやパン)、主菜(肉や魚)、副菜(野菜などのおかず)の組み合わせの定食がお勧めです。一品料理を選ぶ時は、野菜サラダも追加するなど工夫しましょう。

食物繊維の多いものから食べ始める

野菜や海藻、きのこなどから食べ始めることで血糖値の急上昇を防ぐことができます。

油は控えめに

揚げ物に使われる油には脂質がたくさん含まれています。「茹でる」「蒸す」などの調理方法のものを選ぶとエネルギー量を抑えられます。また油を多く使う洋食や中華より、和食がお勧めです。

満腹の男性

最後に

運動をしたからといって食べ過ぎてしまったり、きちんと食事療法に取り組んでいるからといって運動を怠ることが無いようにしましょう。
食べ過ぎてしまっては血糖値の悪化を招きますし、運動療法は食事療法に補助効果をもたらすものだからです。
2つの療法に取り組むことで治療の効果が高まることが期待できるのです。

ページトップへ