逆流性食道炎について

近年、「逆流性食道炎」という病名をよく耳にするようになりました。これまでは高齢者の病気と考えられていましたが、最近では若者の発症も増加しています。

具体的に逆流性食道炎がどのような病気であるか知っていますか?この記事では、逆流性食道炎の症状、検査や治療の方法、予防法についてご紹介します。

逆流性食道炎とは?

逆流性食道炎とは、本来は胃にたまっている胃酸が食道内に逆流し、胸やけなどの症状を引き起こす病気です。
食道から胃へとつながる部分には、食べたものなどが胃から逆流するのを防ぐ「下部食道括約筋」という筋肉があります。
しかし、この下部食道括約筋の機能が低下すると、胃酸が逆流することがあるのです。
このように、胃酸が逆流し食道に炎症が起こる病気を「逆流性食道炎」と言います。それでは、この病気について詳しく見ていきましょう。

逆流性食道炎の発症の原因は?

逆流性食道炎は、下部食道括約筋の機能の低下が胃酸の逆流を引き起こすこと、また、胃酸の量が増えすぎることなどによって発症します。
そもそもこのような異常を引き起こす原因は何にあるのでしょうか。それには、次のような原因があります。

加齢

歳を取るについれて全身の筋肉が衰えるのと同様に、下部食道括約筋の機能も低下します。また、食道のぜん動運動、唾液の量なども少なくなるため、逆流した胃液を胃に戻すことができなくなります。

脂肪の多い食事、食べすぎ

脂肪分のとりすぎや食べ過ぎも、逆流性食道炎を引き起こす原因の一つです。脂肪の多い食事や食べすぎによって、何も食べていない時に下部食道括約筋がゆるみ、胃液が食道に逆流してしまうことがあるからです。
脂肪の多い食事は、下部食道括約筋の機能低下だけでなく、胃酸自体の量を増やすことによっても胃液の逆流を起こしやすくします。
これは、脂肪の多い食事をとったとき、十二指腸からコレシストキニンというホルモンが分泌されるためです。

便秘

若い人に逆流性食道炎が起こる原因の一つは、「便秘」によって腹圧が高まることです。お腹が張っている時、胃は腸からの圧迫を受け、食道への逆流が起こりやすい状況になるのです。
常習性便秘症の人の約10%に逆流性食道炎が見られ、慢性的な便秘によって常にお腹が張った状態になると、若い人でも逆流性食道炎が起こりやすいことがわかっています。

タンパク質の多い食事

タンパク質の多い食事は消化に時間がかかり、胃に長くとどまるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。

このほかにも、ストレス、背中が曲がっていることなども逆流性食道炎の原因と言われています。

逆流性食道炎の症状

胃酸が食道内に逆流することにより、胸やけを中心としたさまざまな症状が現れます。
人により症状はそれぞれですが、主な症状にはこのようなものがあげられます。

  • 胸がやけつく感じがする
  • 食べたものが胸につかえる感じがする
  • げっぷがよく出て、それにより不快感をおぼえる
  • 酸っぱいものや苦いものが上がってくる感じがする
  • ぜんそくのような咳が出る

また、このような症状が夜間に生じ、睡眠障害につながる場合も多いです。さらに、放置すると潰瘍に進行したり、食道がんのリスクが高まります。
逆流性食道炎の原因である便秘や高脂肪の食事は、大腸がん発症のリスクも高めます。

このように胃酸が逆流してしまうと様々な症状が現れます。しかし、なかには胃酸が逆流し炎症が起こっていても症状をそれほど感じないという人もいます。

逆流性食道炎の検査

逆流性食道炎の検査を行う際には、

  • 内視鏡検査
  • X線検査
  • pHモニタリング

を行い、食道の炎症や胃酸の逆流の有無を調べます。少しでも症状を感じたら病院で検査をしてもらいましょう。

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療には、そもそもの原因となった食生活や生活習慣の改善と、薬を使って症状を和らげ回復させる方法があります。
こちらでは、逆流性食道炎の治療の際に使われる薬についてご紹介します。

主に、プロトンポンプ阻害薬を服用し、胃酸尾分泌を抑制します。服用を始めると、数日間で症状の改善が見られますが、逆流性食道炎は再発しやすい病気です。
よくなったからと言って服用をやめてしまうと症状が悪化し、完治しにくくなります。主治医の指示に従って、きちんと薬を飲みましょう。

胃や食道の病気に使われる薬について

逆流性食道炎など、胃や食道の病気に使われる薬には、以下のようなものがあります。

プロトンポンプ阻害薬

胃の細胞にあるプロトンポンプに作用し効果を発揮します。H2受容体拮抗薬より強く胃酸の分泌を抑制し、長時間作用します。

H₂受容体拮抗薬

ヒスタミンH₂という受容体に作用し、胃酸に分泌を抑制します。比較的歴史が長く、安全性が高いと言われているためとてもよくつかわれています。

防御因子増強薬

胃の粘膜を保護し、血流を増やすことで治りを早めます。

制酸薬

胃酸を中和することで胃の粘膜を保護します。透析を受けている方は薬に含まれるアルミニウムを排泄できないので使用できません。

逆流性食道炎の予防法は?

逆流性食道炎を発症しないためには、どのような予防法があるのでしょうか。また、逆流性食道炎は再発しやすい疾患です。
症状が治まったからといって安心せず、下記の点に注意して、健康的な生活を心がけるようにしましょう。

生活習慣の注意点

  • お酒やたばこは控える
  • おなかを圧迫するようなことは控える
  • 食べた後すぐに横にならない
  • 一度にたくさん食べすぎない(腹八分目)
  • 肥満や便秘に注意する

食生活の注意点

逆流性食道炎を発症した方は、以下のような食品は避けたほうが良いでしょう。発症したことのない方も、次のような食品ばかりに偏った食生活にならないように注意しましょう。

  • 脂肪分の多いもの(肉の脂身、ベーコンなど)
  • 甘いもの (チョコレートなど)
  • 消化が良くないもの (イカ、タコ、貝類、繊維質の多いもの)
  • 刺激の強いもの (香辛料、こしょうなど)
  • 炭酸飲料
  • カフェイン

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